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〜見沼田圃の蝶≪ベニシジミ
≫〜
(みぬまたんぼ べにしじみ)
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暖かい晴れた日に、畑や田圃のあぜ道や、林の周りの開けた場所を歩いていると、足元で小さなオレンジ色のチョウがチラチラと飛んでいるのを、どなたも見かけたことがあるのではないでしょうか。
それは、翅を広げてもせいぜい3cm程度の小さなチョウですが、花などに止まっているのをよく見ると、
翅の表には目立つ濃い橙色と黒い斑紋や帯があり、裏は明るい橙色と茶褐色で、体は小さくても、ド
キッとするほど美しいチョウであることに気づきます。このチョウはベニシジミというチョウで、以前紹介した
ミドリシジミと同じシジミチョウ科の一種です。
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日本に暮らすシジミチョウの仲間は80種ほどいますが、シジ
ミチョウの中でもベニシジミのグループ(ベニシジミ亜科)はベニ
シジミの一種だけで少数派ということが出来ます。しかし、分
布は広く、北海道から九州まで各地で比較的普通に見ること
が出来るチョウです。世界的には、ベニシジミ亜科は、ユーラシ
ア大陸と北アメリカ、すなわち全北区に広く分布していますが、
中でも日本にいるベニシジミという種はヨーロッパから北アメリカ
にかけ広く分布するコスモポリタンな種です。
シジミチョウ類の幼虫の食べ物は、種により様々で、植物の
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葉を食べるものから、アブラムシやカイガラムシを食べる肉食のものまでいますが、ベニシジミの幼虫はギ
シギシやスイバ、ノダイオウなどタデ科の植物だけを食べています。「人の好みというものは、様々で、一
概には言えないものだ」という意味のことわざに、「タデ食う虫も好き好き」というものがありますが、まさ
に、ベニシジミはタデ食う虫の代表です。
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また、ミドリシジミなどのいわゆるゼフィルスは、年に1回だけ
成虫が発生しますが、ベニシジミは関東地方では年に4〜5回
程度発生すると考えられています。ベニシジミ成虫のオスとメス
にはミドリシジミのような模様の違いはほとんどありませんが、
季節によって色彩が変わり、春の温度の低い時期に成虫にな
ると、翅の表の橙色の部分が大きく、高温になるに従い黒い
部分の占める割合が大きくなります。そのため、春先には橙色
が綺麗に見えたベニシジミも、真夏にあまり美しくない黒っぽい
チョウに見えてしまいます。
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ベニシジミは、全くの自然環境というより、里山や都市公園
など、人が関わった環境を好むチョウで、見沼田圃でも普通に見ることが出来ます。時にはそんなチョウ
にも目を留め、人と自然環境との関係について考えてみてはいかがでしょうか。
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〜見沼田圃の蝶≪ツマキチョウ
≫〜
(みぬまたんぼ つまきちょう)
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凍りつきそうな寒さも和らぎ、日差しに春の気配を感じ始めると、スミレやオオイヌノフグリなど小さな可憐な花たちも咲き始め、いよいよ本格的な春を迎えようとします。このまだ冬の名残を留める時期に真っ先に春を告げる使者として「スプリング・エフェメラル」日本語にすると「春の妖精」と呼ばれる生き物達が姿をあらわします。
植物ではカタクリやフクジュソウ、イチリンソウなどがこのスプリング・エフェメラルとしてよく知られています。 |
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特にピンク色の花を咲かせるカタクリは、雪国では大群をつくるところがあり、雪解け
あとにいっせいに咲く様子は素晴らしいものです。このカタクリは関東南部では、3月に芽を出し花を咲かせ実をつけ、5月には枯れて地上からは無くなってしまいます。一年のうち約2ヶ月間しか地上に姿をあらわさない植物です。スプリング・エフェメラル(春先のはかない命)とはこのようなことを表現したものです。
チョウの中にもこのカタクリのようにスプリング・エフェメラルと呼ばれるものがいます。その代表格はギフチョウ
でしょう。まだ雪の残る森の中を飛びまわりながらカタクリなどの花を訪れる姿は神秘的ですらあります。残念
ながらギフチョウは埼玉県には分布していませんが、同じように春を告げるスプリング・エフェメラルとして、関東
の平野部などでも見られるチョウにツマキチョウがいます。
ツマキチョウは、モンシロチョウと同じシロチョウ科のチョウで、モンシロチョウよりも一回り小さな可憐なチョウ
です。春先には冬を越したモンシロチョウも飛ぶため、色や形の似ているツマキチョウと見間違うこともあります
が、ツマキチョウの成虫は、前の翅の先端が尖っていてオスはその部分が明るいオレンジ色で、慣れると飛んでいても
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わかります。埼玉県の平地部では成虫は3月下旬から5月の上旬に見ることが出来ますが、成虫は年1回の発生で、その他の時期に見ることは出来ません。
幼虫はタネツケバナやハタザオなどアブラナ科植物の花や実を食べて育ち、5月から6月には蛹になり翌年の春まで休眠してしまいます。まさにスプリング・エフェメラルと呼ばれる所以です。
ツマキチョウはモンシロチョウと似ているため見逃しがちなチョウですが、春のほんの一時にしか目にすることの出来ない可憐で美しいチョウです。是非、身の回りを探してみてはいかがでしょうか。
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〜見沼田圃の蝶≪ジャコウアゲハ
≫〜
(みぬまたんぼ じゃこうあげは)
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